帰経とは食材・生薬の持つ効能が臓腑のどこに作用するかを示しています。食材は経絡を経由して各臓器に作用します。たとえば杏仁は肺経を経由して肺に作用して咳を鎮めます。薬膳を作るときには帰経を意識して上焦(心・肺)、中焦(脾・胃・肝・胆)、下焦(小腸・大腸・腎・膀胱)に属する食材・生薬をバランス良く配分することが理想とされます。全ての帰経の食材を一つの料理に配分することは難しいので、数種類の料理にバランス良く配分することが現実的です。帰経のバランスは大切ですが、例えば、カゼや病中病後で体力が消耗している時は建碑・補気で体力を快復させることが大切です。自分の体調に合わせて無理のない量を取る事が大切です。
棗がゆ(カゼで体力が消耗している時など)
食品や生薬が作用する臓腑を帰経といいます。
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経絡とは生命活動の基本となる気や血を運び体内の臓腑と連絡して、それぞれが円滑に働きます。主なものは肺経、大腸経、胃経、脾経、心経、小腸経、膀胱経、腎経、心包経、三焦経、胆経、肝経の、計12本あります。
自然界を陰陽で分けると陰は大地であり、またそれを潤す水です。陽は太陽であり、その熱で陰である水を温め気化した水蒸気は大地を温めます。温められた大地から草木は水と養分を吸収して光合成により成長し、炭酸ガスを吸収して酸素を放出します。気化した水蒸気は大気を暖め空に昇り、冷やされて雲となり、雨になって地上に降り注ぎます。こうして自然界では、太陽の熱エネルギーによる循環が繰り返されています。自然界の陰陽のバランスが崩れると洪水や干ばつが現れます。自然の一部である人間も陰と陽で作られ、陰陽のバランスが体調の変化として現れます。生体内において陽の尺度は熱で「寒・熱」で現し、陰の尺度は水で「燥・湿」で現します。 また私達の体も自然の一部と考えれば、心臓と肝臓は陽の臓器で心臓は最も熱い臓器です。※脾臓と腎臓は陰の臓器です。肺は陽中の陰の臓器で心臓と協力して各臓器の橋渡しを行います。太陽は心臓、水は腎臓、大地は脾臓、草木は肝臓、雲は肺に例えられます。心臓は腎臓を温め、更に腎臓は脾臓を温め、脾臓は栄養を化成して肝臓に送り、肝臓は栄養とエネルギーの量を調整しながら肺に送り、肺は酸素を取り込んで血液を作り全身に行き渡らせます。
※脾臓は膵臓を含めた門脈系臓器と考えます。漢方ではそれぞれの臓器を肝・心・脾・肺・腎で表し、現代医学の臓器とは少し意味合いが違います。
肝は自律神経と関係があり各臓器の血流量を調節し、気を巡らし、感情の調節も行います。肝は筋肉・爪・目に関係が深く肝の栄養状態は四肢の動き、爪の艶、視力に現れます。肝の不調は血虚、陰虚または気滞となって現れます。
心は血液を循環させる働きと精神活動に深い関係があります。心は顔・舌に関係が深く五味の刺激は必ず心に反映され、精神状態は表情や言葉に現れます。また、心の不調は血虚、陰虚または気虚、陽虚となって現れます。また、実タイプで身体に熱がこもると実熱となって現れます。
脾は栄養の吸収を行い、血液が血管内をスムーズに流れ、血液が漏れだすのを防ぐ統血作用を担っています。脾は皮肉・唇に関係が深く、栄養状態は外見や味覚に現れます。また、脾の不調は気虚、陽虚または食積、不統血となって現れます。また、腸内環境の悪化は瘀血の原因になります。
肺は呼吸により体内に酸素を取り込み二酸化炭素を吐き出します。また肺には病原体から身を守る免疫機能があります。肺は鼻・皮膚・皮毛に関係が深く発汗・体温調節も行います。肺の不調は気虚または陰虚となって現れます。また、免疫機能の不調はアレルギー症状となって現れます。
腎は不要物の排泄だけでなく、人の成長や生命の維持に深く関わっています。また生殖に関わり骨や歯・脳の働きを維持します。腎は髪・耳・泌尿生殖器に関係が深く腎気が衰えると脱毛や難聴が現れます。また、腎の不調は陰虚または陽虚となって現れます。また、水分代謝異状は痰湿となって現れます。
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「医食同源」と言うと病気を治す薬と食べ物は元々同じものという意味に取れますが、病気になる前に普段の食事で予防することの重要性を言ったものです。
薬膳は中医学理論を基礎としていますので、高度な薬膳を目指すには中医学理論を知る事が重要です。上記の「更に詳しく学習する>>」のリンクから先に進んでください。